Webメディアを長く運営していると、ときどき思わぬところから問い合わせが来ます。
広告掲載、相互リンク、サービス紹介、業務提携。
中には明らかな営業メールもありますが、たまに、
「これは少し話を広げたら面白いかもしれない」
と思える連絡もあります。
今回まさにそんなケースがありました。
僕が運営している英語学習メディア「RYO英会話ジム」に、韓国発のAI模擬面接サービス「Preterview」の運営者から直接連絡が来たんです。
最初の提案は、
「レッスンのない日に、受講生の自主練習として使ってもらえませんか?」
というものでした。
ただ、僕の結論としては、
サービスとしては面白い。でも、うちには講師がいるので、わざわざ導入する必要性は高くない。
そこで、少し方向を変えてみることにしました。
最初の提案は「受講生向けに導入しませんか?」
Preterviewは、AIを使った模擬面接サービスです。
履歴書や求人票などをもとに、AI面接官が質問し、回答に応じてさらに深掘りしていきます。
面接後には、
- 回答内容
- 改善ポイント
- 話し方
- フィラー
- コミュニケーション
- 問題解決力
などを分析したレポートも出ます。
営業メールの内容も、よくあるテンプレートではありませんでした。
僕が公開していた英語面接の記事を実際に読んだうえで、
「この練習を、レッスンのない日に受講生が一人でやるとしたらどうでしょう?」
という提案だったんです。
ここは結構大事だと思っています。
営業メールでも、
「こちらの事業をちゃんと見ているか」
で印象はかなり変わります。
一斉送信のような内容なら、ほとんどの場合そのまま終わります。
今回は、少なくともこちらの教育方針を理解したうえでの提案だったので、少し詳しく見てみることにしました。
ただ、サービスが良くても「自社に必要」とは限らない
サービスを見た最初の印象は、悪くありませんでした。
むしろ、
AIが回答内容に合わせて深掘りしてくる
という仕組みは、英語面接との相性がかなり良いと思いました。
英語面接では、
「自己紹介してください」
「これまでの経験を教えてください」
といった質問への回答を準備するだけでは不十分です。
実際の面接では、
「なぜそうしたんですか?」
「具体的には?」
「その結果どうなりましたか?」
と、回答に対してさらに質問されます。
この練習をAIで何度もできるのは面白い。
ただし、ここで一つ問題があります。
僕が運営しているRYO英会話ジムでは、もともと人間の講師がいます。
講師とのレッスンでも、
質問 → 回答 → 深掘り → 添削 → 再回答
までやっています。
つまり、
「良いサービスかどうか」と「自社が導入すべきかどうか」は別問題
なんですよね。
これはWeb運営でもサービス運営でも、かなり重要だと思います。
新しいツールを見ると、
「便利そう」
「AIだし入れてみよう」
となりがちですが、
今すでにある仕組みと比べて、本当に価値が増えるのか?
まで考えないと、単にサービスが増えるだけになります。
僕の場合は、
面白いけど、受講生向けに正式導入するほどではない
という判断でした。
そこで「導入」ではなく「記事で紹介する」に切り替えた
ただ、ここで完全に断るのも少しもったいないと思いました。
なぜなら、日本ではまだほとんど知られていないサービスだったからです。
しかも、
- 英語面接
- 海外転職
- 外資系企業
- AI
- 一人でできる面接練習
というテーマは、僕のメディアともかなり近い。
そこで先方に、
「サービスを導入するより、日本人向けに記事で紹介する形はどうでしょうか?」
と提案しました。
すると、かなり前向きな返事が来ました。
紹介資料や、
- 体験用アカウント
- 実際の面接レポート
- 画面キャプチャ
- ロゴ
なども提供してくれることになりました。
この時点で、
営業先 → メディア掲載の協業先
に関係が変わったわけです。
個人的に、こういう展開はWebメディア運営の面白いところだと思っています。
さらに面白かったのが、途中で日本語対応したこと
最初に連絡をもらった時点では、Preterviewは英語と韓国語の面接に対応していました。
日本語面接には未対応。
そこで先方から、
「日本では日本語での模擬面接にもニーズがあると思いますか?」
と聞かれました。
僕は、
一定の需要はあると思う
と伝えました。
僕自身、就職活動をしていた頃、一番苦手だったのが面接でした。
履歴書なら何度でも書き直せます。
でも面接は、その場で質問されて、その場で答えないといけません。
だから、
一人で何度でも面接練習できる
という仕組みには、日本語でもニーズがあると思ったんです。
さらに僕自身、ちょうど履歴書作成サービスとの相互リンクの話も進めていました。
履歴書を作るサービスにアクセスが集まっているなら、その次のステップである
「面接対策」
にも当然需要はあるはずです。
「履歴書・転職・キャリア系メディアと連携するのも相性が良さそうですね」
という話もしました。
すると、その後すぐ、
「日本語面接にも対応しました」
という連絡が来ました。
質問、深掘り、面接後の評価まで日本語対応。
さらに、
「えー」
「あの」
「えっと」
「なんか」
といった、日本語特有のフィラーまで計測する仕様になっていました。
このスピード感は結構面白かったですね。
記事化するつもりだった。でも、予定どおりには進まない
その後、体験アカウントも発行してもらいました。
面接10回分。
資料も揃いました。
なので、
実際に使う → 体験レビューを書く
という流れを考えていました。
ところが、ここで現実が入ってきます。
別の仕事が急に忙しくなり、なかなかまとまった時間を取れなくなりました。
当初は9月中旬くらいまでに単体記事を公開する予定でしたが、進められない。
これもWeb運営のリアルです。
やりたいことは無限にあります。
SEO記事。
既存記事のリライト。
広告案件。
問い合わせ対応。
SNS。
動画。
本業。
新規事業。
すべてを予定どおり進めるのは、正直かなり難しい。
そこで、
「ゼロか100か」で考えるのをやめました。
単体記事が無理なら、まず既存記事からリンクする
Preterviewから最初に連絡をもらったきっかけは、僕が公開していた英語面接の記事でした。
そこで、
「まずこの記事内でPreterviewを紹介させてもらってもいいですか?」
と改めて連絡しました。
具体的には、
海外企業の英語面接に合格した受講生の事例記事の中で、
「一人で英語面接の練習量を増やしたい人向けのAI模擬面接サービス」
として紹介する形です。
先方からも、
「ぜひお願いします」
と快諾いただきました。
さらに、期限が切れていた体験用アカウントについても、先方から自主的に延長してくれました。
こうして現在は、
①まず既存記事で紹介
②時間ができたら実際に使う
③その後、体験ベースの単体記事を書く
という流れに変えています。
Web運営では「最初の提案どおり」に進めなくていい
今回の件で改めて思ったのは、
問い合わせに対して、YESかNOだけで答える必要はない
ということです。
最初の提案は、
「御社の受講生に導入しませんか?」
でした。
僕の回答は実質NOです。
でも、
「導入は必要ない。ただ、日本人向けに紹介する価値はある」
と考えると、別の形で関係を作れます。
これは相互リンクでも広告案件でも同じです。
相手から、
「この形でやりませんか?」
と言われても、
その形式が自社に合わなければ、
「こういう形ならどうですか?」
と提案すればいい。
今回でいえば、
SaaS導入 → メディア掲載
に変えました。
この発想は、Webメディアを持っているからこそできる強みだと思います。
小さなWebメディアでも「入口」になれる
もう一つ感じたことがあります。
海外サービスが日本市場に入りたい場合、
最初に困るのは、
日本人にどう知ってもらうか
です。
日本語化しただけでは、人は来ません。
SEO。
レビュー。
比較記事。
SNS。
転職メディア。
専門家。
こうした入口が必要になります。
そこで、特定分野のWebメディアを持っている人間には一定の価値があります。
巨大メディアでなくても、
「このテーマなら、この読者に届けられる」
という場所を持っていれば、海外企業から見ると日本市場への小さな入口になる。
これは、今後AIサービスが増えていくほど面白くなると思っています。
世界中で新しいAIサービスが生まれていますが、その全部が日本向けにマーケティングできるわけではありません。
日本語ページを作っただけでは、
日本人ユーザーの目にはほとんど触れないサービス
も大量に出てくるでしょう。
そこに専門メディアが入る余地があります。
AI時代でも「Webメディアを持っている価値」はなくならない
最近は、
「AI Overviewで検索流入が減る」
「ブログは終わる」
という話もよく聞きます。
確かに、単純な情報記事だけなら厳しくなっていくと思います。
でも今回のようなケースを見ると、Webメディアの価値はPVだけではありません。
企業と読者をつなぐ場所になる。
海外サービスを日本市場に紹介する入口になる。
自分自身の体験を加えて、一次情報を作る。
こういう価値は、AIが普及しても残ります。
むしろ、
「○○とは?」
だけを書くメディアより、
実際に企業とやり取りし、サービスを使い、その過程まで公開できるメディア
の方が、今後は価値が高くなるのではないかと思っています。
今回の件で学んだこと
今回の一連のやり取りから、僕自身かなり学びがありました。
特に大きかったのは、
「サービスが良い=導入する」ではないこと。
自分の事業に必要なければ、無理に使わなくていい。
その代わり、
記事、相互リンク、紹介、提携など、別の接点を探せばいい。
そして、最初から大きな企画を完成させようとしなくてもいい。
単体レビュー記事を書く時間がないなら、
まず既存記事から紹介する。
時間ができたら体験する。
その後、詳しい記事を書く。
このくらい柔軟な方が、Web運営は長く続けやすいと思います。
まとめ|Web運営は「アクセスを集める」だけではない
昔の僕は、Webメディア運営というと、
記事を書く → SEOで上位表示する → アクセスを集める
というイメージが強かったです。
もちろん、それも重要です。
でも長く運営していると、それ以外の価値が少しずつ増えてきます。
問い合わせが来る。
企業とつながる。
相互リンクが生まれる。
サービスを紹介する。
新しい企画が生まれる。
ときには、自分の何気ない意見が相手のサービス改善につながることもある。
今回のPreterviewとのやり取りも、最初は一本の営業メールから始まりました。
でも、
「導入する・しない」だけで判断せず、自分のメディアに合った形へ組み替えたことで、別の関係が生まれました。
これも、長くWebメディアを運営しているからこそ起こることだと思います。
アクセス数だけを見ると分からない。
こういう小さなつながりも含めて、僕にとってはWeb運営のリアルです。
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