海外ノマドとして暮らしていると、ときどき「これ、税金はどこの国に払うんだろう?」という問題にぶつかります。
最近、僕がまさに気になったのが仮想通貨を利確したときの税金でした。
僕は現在、生活の拠点をフィリピン・マニラに置いています。一方で、日本にもつながりがあり、ビットコインなどの暗号資産も以前から保有しています。
そこでふと疑問に思いました。
「マニラに住んでいる状態で仮想通貨を利確したら、日本とフィリピン、どちらに税金を払うんだろう?」
さらに考えていくと、
「台湾を旅行しているときに利確したら?」
「海外取引所を使っていたら?」
「日本に住民票が残っていたら?」
など、次々と疑問が出てきました。
調べてみると、海外ノマドなら知っておいたほうがいいポイントがかなりあったので、今回はその内容を整理してみます。
※この記事は2026年9月時点の公開情報をもとにした僕自身の調査・体験です。個別の税務判断は状況によって変わるため、大きな取引をする場合は税理士や現地の税務専門家への確認をおすすめします。
まず、「今いる国=税金を払う国」ではない
僕が最初に勘違いしそうになったのがここでした。
たとえばマニラの自宅でスマホを開いて、ビットコインを売却したとします。
感覚的には、
「フィリピンで売ったんだから、フィリピンで税金を払うのかな?」
と思いますよね。
でも税金は、そんなに単純ではありません。
重要なのは、自分が税務上どこの国の居住者なのか、そしてその所得がどこの国を源泉とする所得なのかです。
つまり「売却ボタンを押した場所」だけで課税国が決まるわけではありません。
日本では「住民票」だけで居住者が決まるわけではない
これは僕にとってかなり重要なポイントでした。
日本に住民票が残っていると、
「じゃあ日本の税務上も居住者なんじゃない?」
と思ってしまいます。
しかし、国税庁によると、所得税法上の「住所」は生活の本拠を意味し、生活の中心がどこにあるかを客観的な事実から判断します。
住居、職業、資産の所在、家族がどこに住んでいるかなどを総合的に見るということです。
つまり、
住民票が日本にある=必ず日本の税務上の居住者
というわけではありません。
海外ノマドとして長期間海外で暮らしている場合、「普段どこで生活しているのか」という実態がかなり重要になります。
これは僕のように海外生活が長い人にとって、知っておいて損はないポイントだと思います。
日本の非居住者なら、暗号資産の利確はどうなる?
ここからがさらに興味深いところです。
日本の国税庁は、海外に住む非居住者が保有する暗号資産を日本の暗号資産交換業者へ売却したケースについて、原則として日本で申告する必要はないと説明しています。
つまり、
「日本の取引所を使った=必ず日本で課税」
というわけでもありません。
逆に、日本の税務上の居住者であれば、暗号資産の売却などによって生じた利益は、原則として雑所得として所得税の対象になります。
ここでもやはり重要なのは、
どのアプリを使ったかより、自分が税務上どこに住んでいる人なのか
ということになります。
では、フィリピンに住んでいたらフィリピンで課税される?
次に調べたのがフィリピンです。
これが最初、かなりわかりにくかったです。
フィリピン税法では、フィリピン国籍を持つ居住者は国内外の所得が課税対象になります。
一方、日本人などの外国人(alien individual)は、フィリピンに居住している場合でも、原則としてフィリピン源泉所得のみが課税対象とされています。フィリピン税法Section 23にもこの原則が明記されています。
簡単に言えば、
「フィリピンに住んでいるから、世界中で得たすべての所得にフィリピン税がかかる」という仕組みではない
ということです。
ここは日本の居住者課税との大きな違いです。
マニラから仕事をした収入は話が別
では「フィリピン源泉所得」とは何なのか。
わかりやすいのが仕事です。
外国人がフィリピン国内でサービスを提供して得た報酬は、支払元や振込先が国外であっても、フィリピン源泉所得になり得ます。PwC Philippinesも、外国人がフィリピンで行ったサービスから得た報酬は、支払場所にかかわらずフィリピンで課税対象になると説明しています。
たとえば僕の場合、マニラからオンラインで仕事をしているので、こうした事業・サービス所得については「日本のお客さんから日本の口座に振り込まれたから日本の所得」と単純には考えられません。
「どこで仕事をしたのか」が重要になります。
海外ノマドにとっては、仮想通貨以上にこちらのほうが日常的には重要かもしれません。
では、ビットコインの利確は?
ここが今回調べていて、もっとも曖昧だった部分です。
仮想通貨の売却益は、仕事をして受け取る報酬とは性質が違います。
フィリピンでは暗号資産について、BIR(フィリピン内国歳入庁)による専用の所得税ルールが十分に整備されているとは言い切れません。
PwC Philippinesも、フィリピンにおける暗号資産の税務上の取扱いには明確でない部分が残っていると指摘しています。
投資目的で長期間保有する暗号資産については、無形資産・capital assetとして扱われる可能性があるものの、具体的な取扱いについてBIRの解釈が異なる可能性もあるとされています。
つまり、
海外で取得したビットコインを海外取引所で保有し、フィリピン居住中に売却した場合、その利益を「フィリピン源泉」と判断するのか
というところには、まだ解釈の余地があります。
ここを「海外取引所だから絶対に非課税」と断定するのは危険だと感じました。
「じゃあ台湾旅行中に利確すれば?」とも考えた
調べている途中、僕も一瞬こう思いました。
「それなら台湾など別の国にノマド滞在しているときに利確したらどうなるんだろう?」
でも、これもそんなに単純ではありません。
たとえば台湾では、外国人の税務上の扱いについて滞在日数が重要で、年間183日以上滞在すると原則として台湾の税務上の居住者になります。
183日未満でも、台湾源泉所得については台湾で課税対象となる場合があります。台湾財政部も外国人について、滞在期間と台湾源泉所得をもとに課税関係を説明しています。
つまり、
「台湾に1週間旅行して、そのホテルで売却ボタンを押せば台湾のルールになる」
という考え方はできません。
これはノマド生活における税金全般にいえることで、物理的にその日どこにいたかより、生活の本拠・税務上の居住地・所得の源泉が重要です。
ノマドになると「183日ルール」だけでも判断できない
海外生活について調べると、よく「183日」という数字が出てきます。
そこで、
「日本に183日いなければ非居住者でしょ?」
と思ってしまいがちです。
しかし日本の国税庁は、居住者・非居住者の判定について滞在日数だけで判断するものではないと明確に説明しています。
海外を転々としていても、日本に生活の本拠があれば日本の居住者になる場合があります。
ノマドだからこそ、
「年間何日いたか」
だけではなく、
「実際、自分の生活の中心はどこなのか?」
を説明できる状態にしておくことが大切だと感じました。
今回調べてわかったこと
今回、自分自身の状況をきっかけに日本・フィリピン・台湾のルールを調べてみて、僕の中ではかなり考え方が整理されました。
ポイントは、
「どこで利確するか」より「自分が税務上どこの人なのか」
です。
そして、もう一つ重要なのが、
仕事で得た所得と、投資資産を売却して得た所得では、所得の源泉を判断する考え方が違う
ということ。
マニラから仕事をしているならフィリピン課税との関係を考える必要がありますが、以前から保有している海外の投資資産を売却する場合は、また別の判断が必要になります。
海外ノマドは「税金ゼロの国」を探すより、居住地を整理したほうがいい
今回いろいろ調べて、個人的に一番大きかった気づきはこれです。
海外ノマドになると、
「この国で利確したら税金が安いのでは?」
「この国に183日以内なら大丈夫なのでは?」
と考えたくなります。
でも実際には、そんなに単純ではありません。
むしろ、
自分はどこの国の税務上の居住者なのか。
自分の仕事はどこで行っているのか。
資産はどこで取得・保有・売却しているのか。
このあたりを普段から整理しておくほうが重要です。
さらに日本では2026年から、暗号資産交換業者などを通じた取引について、居住地国等を届け出るCARF(暗号資産等報告枠組み)の制度もスタートしています。国境をまたいだから取引が見えなくなる、という時代ではなくなってきています。
僕自身も今後、大きく資産を動かすタイミングが来る前に、日本側の「居住者・非居住者」の判断と、フィリピン側での暗号資産売却益の扱いについて、一度専門家に確認しておこうと思っています。
海外ノマドという働き方は自由です。
でも、住む場所が自由になるほど、「自分は税務上どこの人なのか」を自分で把握する必要が出てくる。
今回調べてみて、そこも含めてノマド生活なんだなと感じました。
税金は少し難しいテーマですが、海外生活を長く続けるなら、一度きちんと整理しておいて損はないと思います。
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