こんにちは、デジタルノマドとしてフィリピンで生活しているリョウです。
フィリピンについて調べていると、時々こんな話を耳にします。
フィリピンは昔、アジアでも有数の豊かな国だった。
僕もこの話を聞いたとき、少し意外に感じました。
現在のフィリピンには、BGCやマカティのような近代的な街がある一方で、道路や公共交通、貧困や地域格差など、まだ発展途上国らしい部分も残っています。
では、本当にフィリピンは昔、豊かな国だったのでしょうか。
そして、現在も経済成長しているのでしょうか。
この記事では、フィリピンの過去・現在・AI時代の未来について、できるだけわかりやすく整理します。
フィリピンは昔、本当に豊かだったのか?
結論からいうと、フィリピンは戦後の一時期、アジアの中で比較的発展した国の一つでした。
特に注目されるのが、第二次世界大戦後から1960年代前半ごろです。
当時のフィリピンには、次のような強みがありました。
- アメリカとの結びつきが強かった
- 英語教育が広く普及していた
- マニラを中心に都市やインフラが発達していた
- 教育を受けた人材が比較的多かった
- 東南アジアの周辺国より近代化が進んでいた
戦争で国土を大きく破壊された日本や、朝鮮戦争後の韓国などと比べると、フィリピンが先を走って見えた時期もありました。
ただし、ここで注意したいのは、フィリピン全体が長期間にわたって裕福だったわけではないということです。
都市部には裕福な層がいましたが、地方には貧しい地域も多く、土地や富も一部の有力者に集中していました。
そのため、
フィリピンは昔、アジアで圧倒的に豊かな国だった
というより、
戦後の一時期、周辺国より有利な位置にいた
と考えたほうが実態に近いでしょう。
「豊かだった時代」は意外と短かった

フィリピンがアジアの有望国として目立っていたのは、長く見ても戦後から1960年代ごろまでです。
つまり、歴史全体で見れば、10年から20年ほどの比較的短い期間だったともいえます。
その後、日本、韓国、台湾、シンガポールなどが急速な工業化を進めます。
- 日本は自動車や電機
- 韓国は自動車、造船、半導体
- 台湾は電子部品や半導体
- シンガポールは金融、物流、外資誘致
といった産業を国家レベルで育てました。
一方、フィリピンは製造業を十分に成長させることができず、周辺国との差が広がっていきます。
「フィリピンが急に貧しくなった」というよりも、ほかのアジア諸国がものすごい勢いで追い越していったという面も大きかったのです。
なぜフィリピン経済は伸び悩んだのか?
理由は一つではありません。
政治の混乱と汚職
フェルディナンド・マルコス政権下では、インフラ整備が進められた一方で、汚職や縁故主義、国家債務の増加が深刻になりました。
政治や経済の利益が一部の権力者や財閥に集中し、自由な競争や新しい産業が育ちにくい環境ができてしまいました。
製造業を十分に育てられなかった
経済成長には、国内で商品を作り、海外に輸出する産業が重要です。
ところがフィリピンでは、韓国や台湾のように、世界を代表する製造業企業が十分に育ちませんでした。
現在も電子部品や半導体関連の輸出はありますが、部品の組み立てなどが中心で、産業全体で生み出す利益が限られやすいという課題があります。
人口増加にインフラ整備が追いつかなかった
フィリピンは若い人が多く、人口の増加も経済の強みです。
しかし、人口が急増する一方で、
- 道路
- 鉄道
- 学校
- 病院
- 住宅
- 電力や通信設備
などの整備が十分に追いつきませんでした。
マニラの深刻な渋滞も、そのわかりやすい例でしょう。
富の偏りが大きい
BGCやマカティには、高級コンドミニアムやショッピングモール、外資系企業が並んでいます。
一方、少し離れると、まったく違う生活環境が広がっています。
フィリピンでは経済が成長しても、その利益がすべての人に同じように届くわけではありません。
そのため、経済の数字が伸びていても、普通の人の生活が同じ速さで豊かになるとは限らないのです。
現在のフィリピン経済は成長している?
では、現在のフィリピン経済はどうなのでしょうか。
長い目で見れば、フィリピンはしっかりと経済成長しています。
世界銀行によると、2010年から2023年までの実質GDP成長率は年平均約5.2%で、中所得国の中でも比較的高い成長を続けてきました。
また、一人当たり国民所得も過去20年間で3倍以上になり、2024年には4,470ドルに達しています。
フィリピン経済を支えてきた主な要素は、次のとおりです。
- 若くて多い人口
- 国内消費の拡大
- 海外で働くフィリピン人からの送金
- 英語力を生かしたBPO産業
- 外資系企業の進出
- 不動産や都市開発
- 観光やサービス業
実際にマニラで生活していると、新しいコンドミニアムや商業施設が次々と建設され、若い中間所得層も増えているように感じます。
一方で、最近は成長の勢いがやや弱くなっています。
フィリピン統計庁によると、2024年のGDP成長率は5.7%でしたが、2025年は4.4%に低下しました。さらに、2026年第1四半期の成長率は前年同期比2.8%でした。
つまり、
フィリピン経済は成長を続けているものの、常に順調なわけではない
というのが現状です。
フィリピンの成長を支えたBPO産業
フィリピンの経済成長を語るうえで、外せないのがBPO産業です。
BPOとは「Business Process Outsourcing」の略で、企業が一部の業務を外部の会社や海外拠点に任せる仕組みです。
フィリピンでは、主に次のような仕事が行われています。
- コールセンター
- カスタマーサポート
- チャットやメール対応
- データ入力
- 経理や人事の事務
- 医療関連の事務
- ITサポート
- ソフトウェア開発
フィリピン人は英語力が高く、アメリカ文化にも比較的なじみがあります。
また、欧米諸国より人件費が低いため、多くの海外企業がフィリピンに業務を委託してきました。
BPOは、単に雇用を生み出しただけではありません。
マニラやセブなどの都市部で、安定した収入を得る若い中間所得層を増やし、コンドミニアムや外食、ショッピングなどの消費も支えてきました。
AIによってBPO産業は衰退するのか?
ここで大きな問題になるのが、AIの進化です。
生成AIや音声AIは、すでに次のような仕事ができます。
- よくある質問への回答
- チャットでの問い合わせ対応
- 定型メールの作成
- 会話内容の要約
- データの整理や入力
- 電話への自動応答
- 複数言語への翻訳
これまで人間のオペレーターが行ってきた業務の一部は、AIで代替できるようになっています。
特に影響を受けやすいのは、マニュアルどおりに答えるだけの仕事です。
例えば、
注文状況を確認する
パスワードの再設定方法を案内する
営業時間や料金を説明する
といった問い合わせは、AIでもかなり対応できます。
そのため、今後BPO業界では、単純な問い合わせ対応の求人が減る可能性は十分にあります。
現場で聞いた、AI時代のBPO業界のリアル
実際、僕の身近でもこの変化はすでに始まっています。
僕のパートナーのお兄さんは、現在コールセンター業界で働いています。本人から聞いた話では、BPO業界はまさに今、大きな過渡期にあるとのことです。
以前はオペレーターとして顧客対応に関わっていましたが、現在はコールセンター業務で使う専用AIの設計にも携わっているそうです。
この話を聞いて感じたのは、AIによってBPOの仕事が単純になくなるというより、人が担当する仕事の中身が変わり始めているということです。
これまで人間が行っていた定型的な問い合わせ対応はAIに移り、その一方で、人間はAIの仕組みを設計したり、回答を確認したり、より複雑な顧客対応を担当したりするようになっています。
まさに現場では、
「AIに仕事を奪われる段階」ではなく、「AIを使う仕事へ移行する段階」
に入っているのかもしれません。
BPOの仕事がすべてなくなるわけではない
ただし、AIによってBPO産業全体が消滅するとは限りません。
むしろ、仕事内容が変化すると考えるほうが自然です。
AIが得意なのは、決められたルールに沿った大量処理です。
一方、人間には次のような役割が残ります。
- 複雑な問題の解決
- 怒っている顧客への対応
- 相手の感情を読み取る
- 例外的なケースを判断する
- 営業や価格交渉をする
- 長期的な信頼関係を築く
- AIの回答を確認・修正する
フィリピンの業界団体IBPAPも、AIを単なる雇用の脅威ではなく、生産性やサービスの質を高めるための技術として取り入れようとしています。
つまり今後は、
人間かAIか
ではなく、
AIを使える人間と、AIを使えない人間
の差が広がっていく可能性があります。
「英語が話せるだけ」では厳しくなる
これまでのフィリピンでは、英語が話せること自体が大きな就職上の強みでした。
しかしAIが自然な英語を話し、文章を作り、電話にも対応できるようになると、英語だけでは差別化しにくくなります。
これから必要になるのは、英語に加えて別の専門性を持つことです。
例えば、
- IT
- 医療
- 会計
- 法律
- マーケティング
- 営業
- データ分析
- プロジェクト管理
- AIの運用や品質管理
などです。
単純な英語対応から、専門知識を使う高付加価値な仕事へ移れるかどうかが、フィリピンのBPO産業にとって大きな分かれ道になります。
フィリピンの強みは、人との距離感にある
僕がフィリピンで生活して感じるのは、フィリピン人には単なる英語力だけでなく、人との距離を縮める力があることです。
明るさ、親しみやすさ、感情表現、ホスピタリティなどは、フィリピン人の大きな強みです。
もちろん、すべての人に当てはまるわけではありません。
それでも、クレーム対応、営業、医療サポート、教育、コーチングなど、人間的な安心感が必要な仕事では、この強みが今後も生きる可能性があります。
AIが事務的な処理を担当し、人間がより複雑で感情的な部分を担当する。
そのような形に変われば、フィリピンは今後も世界的なサービス拠点として残れるでしょう。
フィリピン経済は再び飛躍できるのか?

フィリピンには、まだ多くの可能性があります。
- 1億人を超える人口
- 若い労働力
- 高い英語力
- 拡大する国内消費
- 海外で活躍する人材
- ASEAN市場へのアクセス
一方で、乗り越えなければならない課題もあります。
- 教育の質
- インフラ不足
- 汚職や政治の問題
- 格差
- 製造業の弱さ
- AIによる雇用の変化
フィリピンが本当の意味で豊かな国になるためには、人口や英語力だけに頼るのではなく、教育、産業、技術への投資を進めることが重要です。
AIによって従来の仕事が減る可能性はあります。
しかし、AIを使ってより高度なサービスを提供できれば、新しい成長のきっかけにもなります。
まとめ:フィリピンは「昔豊かだった国」ではなく、変化の途中にある国
フィリピンは戦後の一時期、アジアの中で比較的有利な位置にいました。
しかし、その期間はそれほど長くなく、その後は日本、韓国、台湾などの急速な工業化に追い越されていきました。
現在のフィリピンは、長期的には経済成長を続けています。
ただし、成長の恩恵には偏りがあり、インフラや格差などの問題も残っています。
さらに今後は、これまで成長を支えてきたBPO産業が、AIによって大きく変わっていくでしょう。
とはいえ、フィリピンの未来が暗いと決まったわけではありません。
重要なのは、
英語が話せる人材を増やすことではなく、英語・専門性・AIを組み合わせられる人材を育てられるかどうか。
フィリピンは、かつての豊かさを取り戻そうとしている国というより、AI時代に合わせた新しい成長モデルを作れるか試されている国なのだと思います。
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