オンラインサービスを運営していると、こんな場面があります。
「サービスには満足している。でも、仕事が忙しくて今までのペースでは続けられない」
こういうお客様に対して、あなたならどう対応するでしょうか。
以前の僕なら、
「できれば今のプランのまま継続してもらいたい」
と考えていたかもしれません。
当然ですよね。
月額プランを継続してもらえれば、事業としての売上も安定します。
でも最近は、少し考え方が変わりました。
無理に同じプランを継続してもらうより、ダウングレードしてでも関係を長く続けてもらったほうがいい。
今回は、僕が運営しているオンライン英語コーチングサービスで実際にあったケースから、この考え方について紹介します。
仕事が忙しく、レッスンを消化できなくなった受講生
ある受講生の方が、月額のレッスンプランを利用していました。
ただ、仕事の予定がかなり流動的になり、思うようにレッスンへ参加できなくなっていました。
その結果、未使用のレッスンチケットが6枚残っている状態。
通常であれば、翌月に繰り越せるチケット数には上限があります。
そこで更新時に、こちらからひとつ提案しました。
「今後も定期的な受講が難しいようでしたら、月額プランではなく、3ヶ月間好きなタイミングで使えるフレキシブルなチケットプランへ変更することもできます」
という内容です。
フレキシブルプランの場合、最低2枚から購入できるようにしているため、毎月決まった金額を支払う必要がありません。
忙しい時期であれば少ない枚数だけ購入して、必要になったら追加する。
そんな使い方ができます。
お客様から返ってきた質問
すると、お客様からこんな相談がありました。
「現在残っているチケットを繰り越したまま、フレキシブルプランへ変更することはできますか?」
つまり、
「一度月額プランを更新しないと、チケットは失効してしまうのか?」
という確認でした。
ここで僕は、
月額プランを無理に更新してもらう必要はない
と判断しました。
そこで、
・月額プランからフレキシブルプランへ変更
・最低購入枚数の2枚を購入
・新しい有効期限を3ヶ月に設定
・既存チケットを繰り越す
という形を提案しました。
通常、月額プランから繰り越せるチケットには上限があります。
ただ今回は事情を考慮して、残っていた6枚すべてを繰り越せるようにしました。
結果的に、
新規購入2枚 + 残チケット6枚 = 合計8枚
を3ヶ月間、自分のペースで利用できる形になりました。
「規定よりも顧客体験」を優先した結果
その後、お客様から、
「繰り越し最大枚数の規定がある中での対応、ありがとうございます」
という趣旨のお返事をいただきました。
このやり取りを見て、改めて感じたことがあります。
それは、
お客様は単に「チケットを得した」と感じているわけではない
ということです。
むしろ、
「自分の状況を理解してもらえた」
「無理に高いプランを勧められなかった」
「続けられる方法を一緒に考えてもらえた」
という体験のほうが大きいと思っています。
オンラインサービスでは、この感覚がとても重要です。
短期的には売上が下がる。でも長期ではプラスになる
もちろん、事業者側だけを見れば、月額プランをそのまま継続してもらったほうが短期的な売上は大きくなります。
たとえば、
月額10,000円のお客様を月額3,000円相当のプランへ変更すれば、その月だけを見れば売上は下がります。
だから、
「ダウングレードを提案するなんてもったいない」
と考えることもできます。
でも、ここで見るべきなのは1ヶ月の売上ではありません。
重要なのは、
そのお客様とどれくらい長く関係を続けられるか
です。
マーケティングではこれをLTV(顧客生涯価値)という考え方で見ることがあります。
簡単に言えば、
1人のお客様が、サービスとの関係全体を通じてどれくらい利用してくれるか
ということです。
たとえば、
月額1万円を3ヶ月で解約された場合は3万円。
一方、
一度月額3,000円程度までダウングレードしたとしても、その後1年、2年と利用が続けば、結果的な売上は大きくなる可能性があります。
さらに、仕事が落ち着いたタイミングで、
「また月額プランに戻したい」
となることもあります。
つまり、
ダウングレード=失客ではありません。
むしろ、
完全に辞めてしまう前の「受け皿」
として設計することができます。
「継続か退会か」の2択にしない
今回の経験で改めて重要だと思ったのが、これです。
オンラインサービスでは、
継続するか、退会するか
の2択にしない。
たとえば、
通常プラン
↓
忙しくなる
↓
ライトプラン・チケット制へ変更
↓
自分のペースで継続
↓
余裕が戻ったら通常プランへ
という道を用意しておく。
これだけでも、解約率はかなり変わってくる可能性があります。
特に英語学習、コーチング、オンラインスクールなどは、サービスに不満がなくても辞める人がいます。
理由は、
「仕事が忙しい」
「子育てが大変」
「海外出張が増えた」
「一時的に時間が取れない」
などです。
つまり、
サービスへの不満ではなく、生活環境の変化による退会
です。
このタイプの人を無理に今のプランへ引き止めても、長くは続きません。
だったら、
「今の生活に合うサイズまでサービスを小さくする」
ほうが自然です。
解約防止は「引き止めること」ではない
以前は、「解約防止」という言葉に少し違和感がありました。
解約しようとしている人を必死に引き止めるようなイメージがあるからです。
でも今回の経験から、
解約防止とは必ずしも、
「辞めないでください」
と説得することではないと感じています。
むしろ、
その人が無理なく続けられる形を用意すること
なのかもしれません。
月額プランが重ければチケット制にする。
週2回が厳しければ週1回にする。
毎月が難しければ3ヶ月単位にする。
サービス提供者側が少し柔軟になるだけで、関係を切らずに済むことがあります。
小さな事業ほど「柔軟さ」が武器になる
大手企業の場合、細かい例外対応は難しいことがあります。
何万人という顧客がいるため、ルールを統一しないと運営できないからです。
一方、個人事業や小規模なオンラインビジネスには別の強みがあります。
それが、
一人ひとりの事情に合わせられる柔軟さ
です。
もちろん、何でも例外対応すればいいわけではありません。
ルールを崩しすぎれば運営が複雑になりますし、不公平感が生まれる可能性もあります。
だから基本ルールは持っておく。
そのうえで、
「この人の場合は、どうすれば長く気持ちよく利用してもらえるか」
を考える。
このバランスが大切だと思っています。
売上を最大化するより、関係を長くする
オンラインビジネスをしていると、
単価を上げる
アップセルする
継続率を上げる
LTVを伸ばす
といった言葉をよく聞きます。
もちろん、どれも大切です。
でも今回改めて感じたのは、
LTVを伸ばすために、必ずしも毎回アップセルする必要はない
ということです。
ときには逆に、
ダウングレードすることがLTVを伸ばす
場合もあります。
目の前の1万円を取りにいくより、
その人との関係をあと1年続ける。
そのほうが、お客様にとっても事業者にとっても良い結果になることがあります。
まとめ|「辞めない仕組み」より「続けやすい仕組み」を作る
今回の経験から、僕が大切だと感じたのは次の考え方です。
お客様を無理に現在のプランへ留めないこと。
生活や仕事の状況が変われば、最適なサービスの形も変わります。
だから、
月額プランからチケット制へ。
高頻度から低頻度へ。
一時的にダウングレードして、また戻ってくる。
そんな「行ったり来たりできる設計」にしておく。
短期的には売上が減ることもあります。
でも長期的には、
顧客との関係が続き、結果としてLTVが伸びる可能性があります。
オンラインビジネスでは、売上を最大化すること以上に、
「このサービスなら、自分の状況が変わっても続けられる」
と思ってもらえることが大切なのかもしれません。
僕自身もこれから、
「どうすれば解約を防げるか」
ではなく、
「どうすれば無理なく続けてもらえるか」
という視点で、サービス設計をさらに改善していこうと思います。
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